サーフボードのミニチュアを3Dプリンタでプリントしてみる
前回の記事でサーフボードのキーホルダをSTLファイルにしました。
FreeCADでサーブボードのキーホルダをつくる
今回はこのSTLモデルを3Dプリンタでプリントしてみます。
スライサはSIMPLIFY3Dを使いました。
モデルの設置向きに悩む
形はシンプルなサーフボードですが曲面が多く造形ベッドにどう置いたら良いか悩むところです。フィンがある底面はベッドに置きにくいです。文字がある面を下向きに置きましょうか?
文字の上面はサーフボードのノーズよりも低いので文字を下に向けてプリントしようとすると、文字面もサーフボード面も宙に浮いてしまいます。つまりサポートは必須です。
サポートを付けたとしても下を向いた面はきれいにプリントできないです。数回試しにプリントしましたがプリントされた面は荒れすぎてヤスリで削るのも大変でした。何より文字が美しくプリントできないと見た目が悪すぎです。
サーフボードを水平に置いてみる
文字を綺麗にプリントためフィンのある面を下向きにプリントする事にしました。こんな感じです。
造形ベッドに接触しているのはセンターフィンの先端だけです。底面はサポートで埋もれます。
サイドフィンはサポートの土台から生やさないとなりません。う~ん、ちゃんと生えるかな?
と、考えるよりプリントした方が早いです。プリントに2時間弱かかりますけど。
プリントした結果は以前の記事で何回か写真を載せていました。
ほら、きれいにできてるでしょ! 文字もくっきり。
・・・
・・・
底面の状態は・・・
サポートをうまく剥がせるとこんな風になります。
これはきれいにできた時です。サポートも簡単に剥がれます。SIMPLIFY3Dのサポートはとても剥がしやすいです。
フィンがちゃんとあります。
実は何個もプリントしているのですがフィンがまともにできる事はほとんどありませんでした。
この写真では良くわからないでしょうが、サーフボードの底面が荒れています。ほぼ真下を向くような面はきれいにプリントできませんね。
量産しているわけではありません・・・
ほとんどフィンをプリントできませんでした。まさかセンターフィンが作れないとは。
造形ベッドに接触しているのはセンターフィンの先端だけです。1層目でベッドへの定着に失敗しているとフィンのプリントはもう望めません。
サイドフィンはサポートの上からプリントが始まります。SIMPLIFY3Dはとてもサポートが剥がしやすいと言われています。という事は・・・サポートの上に面積が小さい物をプリントすると・・・途中で剥がれてしまいます。
今回のフィンのように下側が細く上にいくに従いだんだん太くなるような形状の場合、小さい面積で大きなものを支える形になります。プリント中は移動するノズルで右へ左へと揺さぶられます。そのうち剥がれてしまうのもうなずけます。
ボード下面の荒れた状態を改善しようとフィラメントの温度の調整を試みますが目に見える効果がありませんでした。
こんな事もありフィンのデザインを何度も変えました。
2色造形にチャレンジしてみる
あまりにうまくいかないのでめげそうになります。気分転換にデュアル造形にもチャレンジしました。文字の色を変えたいなと。はい。底面は見せません。フィンがもげてます!
サーフボードをプリント中に文字用の白いフィラメントが垂れてきます。ボードに白い点々が埋め込まれてしまいます。半透明のABSを使ったので目立っています。2色造形も課題が多そうです。
サーフボードと文字を別のSTLファイルにしています。SIMPLIFY3Dでインポートすると簡単に合成できます。
Dual Extrusion Wizardを使うとSTLモデル毎にどちらのノズルで造形するか簡単に指定できます。
もしもDual Extrusion Wizardが動かないという場合はこちらの記事を参考にしてみてください。
SIMPLIFY3DのFFF SettingsにAuto-Configure Extrudersのドロップダウンリストを表示させる
水平に置くのはダメなようだ
しばらくこのプリント方向で格闘していました。文字が綺麗に出るのでパッと見は良いのですが裏面との品質差がありすぎて達成感が半減します。何より汚い面の面積が広すぎます。サポートが必要なのは仕方ありませんが汚い部分の面積を減らしたいです。
サポートがいらない角度に置いてみる
いろいろ考えた結果、サポートとの接触面積を最小にするしかない!という結論に達しました。これを実現するために次のようなプリント方向になりました。オーバーハング部分は60度程度までは綺麗にできるようになっていました。つまりその角度までならサポートなんて要らないのです。
ボード底面と文字の壁面の角度が45度程度になるように置けばサポートの影響をほとんど受けずに造形できるかも。
問題は空中に浮いてしまうテールとサイドフィン2つです。この置き方でフィンのある部分までを何回か造形して問題点を洗い出しました。
サイドフィンの先端にだけサポートを置くと、水平に置いて造形していた時と同じ課題が残ります。造形途中のフィラメントに引きずられてもげてしまいます。
これを防ぐためフィンの側面を補強するサポートをマニュアルで追加しました。
サーフボードのテールが完全に宙に浮いているのに自動ではサポートが付きませんでした。サポートピラーの分解能を5mmにしていたため、細かい部分にサポートが自動で付きません。分解能を2mmほどにすればサポートが付きますが、サポート自体が小さくなりすぎプリントができない可能性が上がります。
テールにもマニュアルでサポートを設置して補強しました。
テールのプリント途中で傾斜方向に引き倒されそうに揺れる事がありました。センターフィンと一体化する前に倒れないようサポートを追加します。定着が弱いのでヘッドにつられ揺れやすいです。これは積層の乱れとなります。
自動のサポートが文字部分に配置されすぎるので、スレッショルド角度を大きくしてほとんど自動ではサポートが設置されないようにしました。
ボード中央から先に無意味に見えるサポートがあります。実際のところサポートとして何の役にも立っていないようです。
サポートしては役に立ちませんが造形の具合をモニタするのに使えます。細く薄い造形になります。ノズルの温度が低いと積層剥がれを起こしてこの高さまで成長できないでしょう。定着が悪ければ途中で揺れてもげます。面の状態でフィラメントの押し出し量の判断もできます。
さぁ、プリントが完了し無事に出来上がりました。
途中で失敗すると思っていたので感激です。
ちょっと積層ずれが目立ちますかね。この程度ならヤスリで簡単にきれいにできそうです。大きな乱れはありませんし文字もきれいです。
問題が生じそうな底面を見てみます。
この程度の角度なら問題は無いようです。以前に比べ断然にきれいにプリントできました。
サポートが機能しているか確認します。
フィンの形もきれいにできています。思った以上の成果です。
斜め置きの考察をしてみる
今回はサーフボードの上面にだけ文字があるので斜めに置けました。本当は底面側にも文字を入れたいのですが、そうしたら斜め置きも難しいです。上面底面で分割を考えななくてはならないのでしょうかね。サーフボードのテールに乱れがあります。きっとサポートとの定着が弱いので揺れてしまったのでしょう。その後もところどころ積層が乱れています。
この造形をするためABSの温度を以前より数度上げました。層と層との密着度を上げるためです。今までは少し低すぎたのかもしれません。垂れを避けようとするあまり温度を下げすぎていたかも。
今回の文字サイズでは判らないですが、水平置きに比べ上面の文字の分解能が上がり小さい字の輪郭を表現できるようになりました。水平置きではノズル径0.4mmが文字の輪郭の分解能になります。層厚を0.25mmでプリントしています。斜めに置くことでわずかですが分解能が上がります。文字高5mm程度の場合、効果絶大です。
水平置きではフィンの付け根が積層方向と同じだったためフィンが簡単にもげてしまいました。斜めに置くことでサーフボードとフィンが一体として成型されるのでフィンが取れる事は無くなるでしょう。
今回のサーフボードのプリントでやっと3Dプリンタのいろいろなパラメータの関係が判った気がします。ほとんど造形ベッドに接触していないモデルのプリントもできました。今後のプリントの自由度が上がります。
この程度のサポートならサポートとモデルの距離をゼロにして完全に固定できるようにした方が良さそうです。後で試したところ、サーフボードテール部分の揺れが無くなりボード全体にわたりきれいにプリントできました。サイドフィンもきれいに積層されます。プリントされたものの定着が弱かったり細長いものだとノズルの移動でたわんでしまいプリント位置がズレてきれいな形になりません。サポートとの距離をゼロにすると本体が動かないように固定されるのです。
サポートが剥がれにくくなりますが量も少ないので簡単に整形できます。
マニュアルでサポートを配置できるSIMPLIFY3Dの特徴を今後はどんどん使っていきたいです。マニュアルサポートはとっても便利ですね。
次は2色プリントをしたいのですが・・・
シングルプリントでの自信を深めたのですが、この斜め置きで二色プリントがうまくできる気がしません。SIMPLIFY3DのBrimとかOoze Shieldとかの動作に納得のいかない部分が目立ち始めました。明らかにおかしいだろうと。この辺の動作はSlic3rの方がはるかに良いです。
近いうちにSIMPLIFY3Dの納得いかない動作についてまとめてみようと思います。
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