FETでモーターを動かし初心者の壁を突破 【電子工作始めますか?】

タイトル

Lチカから先へ進み、電子工作と言えるのはここから。
FETを使ってLチカ、そしてモーターを動かしてみます。

前回はLチカをやってみました。

Lチカをやってみたという方も多いでしょう。ですがここから先へ進むのは難しいのではないでしょうか。次に何をすればいいの?
電子工作と言えるのはこの先です。

FETでLEDを光らせる

FETを使った回路でLEDを光らせます。回路図はこれ。
FETでLEDを光らす回路

Lチカに比べると、FETと抵抗2つが増えています。

C1のコンデンサも増えてますね。C1は作った回路で発生した電源ノイズをラズパイへ戻さないために入れます。数十μFの電解コンデンサを付けます。コンデンサにはプラスとマイナスがあり逆に付けると破裂するので間違えないようにしてください。

FETにはソース ドレイン ゲートの3つの端子があります。
ゲートとソース間の電圧 VGSがある電圧以上になるとドレインとソース間の抵抗RDSがとても小さくなり電流が流れます。この電圧をゲートしきい値電圧 Vth と言います。
今回はGPIOの3.3Vで動かせるFETを選んであります。

FETのゲートはソースともドレインともつながっていません。絶縁されています。だからドレインに何がつながっていても影響されません。

絶縁されているゲートは小さなコンデンサみたいになっているので僅かに電気が貯まります。貯まった電気がGPIO端子へ流れ込む勢いを弱めるために抵抗R1がついています。大体数百Ω以下にします。回路図では手元にあった200Ωを使っていますが、100Ωでも270Ωでも大きな違いはありません。手に入った抵抗を使えばいいです。

絶縁されているゲートはどこへもつながっていないと電圧が定まりません。僅かなノイズで数十ボルトの電圧になることもあります。GPIO端子のコネクタを抜いた時など、ゲートが宙ぶらりんになるとノイズでFETがオンになってしまうのです。これを避けるために抵抗R2があります。抵抗R2があるのでGPIOから外した時ゲートとソース間の電圧VGSが0ボルトになりFETがオンになることはありません。

抵抗R2の抵抗値はR1に対して桁が違う大きさにします。2kΩ~1MΩくらいまで、手元に合う抵抗値があれば何でもいいです。今回は私の手元に10kΩがあったから使っただけです。
PWMを数MHzの高い周波数で使いたいとか別な理由ができると範囲は狭まりますが、今回の目的ならガバガバな抵抗値でいいです。
電子工作は目的を達成できる部品を選ぶので選択肢がとてもたくさんあるんです。

FETの選び方

FETを選ぶのは大変です。まず手に入ること。アマゾンやアキバの電子部品通販店で買えることが条件です。
今回FETは 2SK4017 を使いました。
データシート 2SK4017  |東芝デバイス&ストレージ株式会社
FETなら何でもいいという訳にはいきません。
FETにはNチャネル型 Pチャネル型 デプレッションタイプ エンハンスメントタイプといろいろ種類があります。デジタル出力のスイッチとして使う場合はNchエンハンスメントタイプを選択します。
それでも先ほどのゲートしきい値電圧Vthの違いでとてもたくさんのFETがあります。

ラズパイのGPIO 3.3Vで使うにはVthが2Vほどのものを選ばなくては動きません。
2SK4017 のVthは2.5Vです。少しギリギリ。

FETがのVthは高い電圧の物が多いです。パワー系という電源周りでの利用を想定された物がほとんどです。3.3Vで使えるFETは多くありません。
Vthが3Vを下回っていても、実際はドレインソース間が十分にオンにならずRDS抵抗が大きく使いづらかったりします。

ここでFETでの電力損失を計算します。電力損失からFETに電流を流した時に何℃になるか?がわかります。FETは150℃が限界温度です。夏の30℃の部屋で使うなら余裕は120℃です。ケースに入れて風が通らず60℃のところで使うなら90℃の余裕です。
150℃ギリギリで設計するはずはなく大体120℃とか100℃を上限に設計します。すると60℃の環境で使うなら40℃しか余裕がありません。

この計算で使うのは熱抵抗Rθです。1ワットの電力を消費した時に何℃上昇するかを表しています。何も放熱をしなければ大体100~150℃/Wです。
1ワット使ったらもう150℃超えそうです。
放熱板をつければこれを50℃/Wとか20℃/Wに下げられます。パソコンのCPUにヒートシンクをつける理由と同じです。

実験でブレッドボードに挿すだけで放熱などしない使い方なので、ざっくり電力損失0.5Wを上限に考えておけば良いでしょう。
FETのRDSをデータシートを見て読み取ります。VGSが3.3Vの時のRDSです。そのままズバリ書いてあることはないでしょう。グラフから大体の値を読み取ります。
2SK4017の場合は読み取るのが難しいですが、大きめに0.5Ωと判断しました。
すると W=I2Rですから、
I = √(W / R) = √( 0.5 / 0.5) = 1(A)
となります。
つまり1Aまで流しても焼けて壊れる事はなさそうだ、となります。

この熱の考え方はFETだけでなくICでも同じです。データシートには必ずRθが書いてあります。Rθjaというのを探してみてください。

FETでモータを回す

1Aは流せそうなので模型のモータを回してみます。3Vで使う模型用モータが大体700mA以下のようです。
回路はこれ
FETでモータを回す回路

LEDがモータに置き換わっただけです。電源はモータ用電池を用意します。
D1は整流用ダイオードです。モータはコイルでできていてFETがオフになる時逆起電力が発生します。その電気でFETが壊れないようついています。
FETのゲートはモータ側と絶縁されているので、3.3V以上の電源を使うモータも使えます。今回は3Vなので下がっちゃいましたけど。2SK4017は60Vの耐圧です。24Vくらいまでなら使えるでしょう。ただし電流は1Aまでなのを忘れずに。

FETを使うとほとんど同じ回路でLEDとモータというまったく違うものが動かせます。FETは駆動するものと制御するラズパイなどを分離して仲介する働きをしています。

まとめ

FETを使うといよいよ電子工作と言えるようになります。LEDとモーターを同じFETの回路で動かしました。自分でFETを選ぶのは無理でも、ラズパイと外の回路を分離していると理解した事が重要です。

ラズパイは3.3Vしか扱えません。GPIOには16mAしか流せません。全部のGPIOで50mA以上使ったらいけません。この枷を解き放つのがFETです。
そしてHAT基板などに搭載されているICにはこのFETが内蔵されています。だから自由にGPIO端子に挿せるのです。
ソフトウエアが得意な方ならFETはオブジェクト志向のカプセル化と同じだと思えば良いでしょう。ICやHAT基板はオブジェクトモジュールです。
インターフェースを介さずオブジェクトの実体をいじるような事をするとソフトと違いハードは本当に壊れます。

ただのLチカとFETを使ったLチカ。同じように見えても中身は天と地の違いがあります。

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