2万円台の3Dプリンタを一年間使った感想 【TRONXY XY-2 PRO TITAN】

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3Dプリンタ TRONXY XY-2 PRO TITAN を買って一年が経ちました。感想と使う上でのポイントを紹介します。少し癖がある機種ですが初心者にオススメできます。


価格は2万円台、一時期は2万円を切る事もあった TRONXY XY-2 PRO TITAN。使い始めて一年が経ちました。

TORONXY XY-2 PRO

XY-2 PROはオープンソース化されたEnder 3のクローンモデルです。完全なクローンではないので改良されている点もあります。Ender 3との比較を交えて特徴を見てみます。

XY-2 PROは半完成品です。数カ所ネジ止めすれば完成します。Ender 3など安い3Dプリンタは自作キットになっている事が多いです。主要なモジュール単位では組み立てた状態で入っているでしょうから組立が難しい事はありませんが、こういうのをやったことがない人にとっては大変でしょう。部品の正しい向きとか慣れていないと分かりづらいです。
3Dプリンタで何かプリントしたいと思って買うので、3Dプリンタを作りたいわけではないでしょうから、XY-2 PROは初心者向けと言えるでしょう。

ベッドサイズ

ベッドサイズがEnder 3に比べ大きくなっています。その分大きなモデルをプリントすることができます。
Ender 3のベッドサイズ: 220×220×250mm
XY-2 PROのベッドサイズ: 255x255x260mm
                                      (TITANモデルは高さ245mm)
Ender 3より大きいので少し設置スペースが広く必要です。どちらも奥行き60cmの棚に置けるでしょう。
ベッドサイズは大きい方がお得とか、大きいモデルをプリントできて面白そうとか思うかもしれませんが、大きなモデルのプリントはとても時間がかかります。一日から数日という時間です。そしてプリントが成功する確率はとても低いのです。初めて3Dプリンタを買う方はベッドサイズを気にしない方が良いです。100mmは小さすぎてプリントできるものが限られてしまいますが200mmあればほぼ十分かと思います。

ファームウエア

ファームウエアとは3Dプリンタ自体の制御プログラムの事です。ファームウエアで使い勝手が決まります。
ファームウエアはChituが使われています。Marlinクローンっぽいファームウエアです。

USBシリアル通信

USBシリアル通信でG-CODEを送り動かす事もできます。しかし、Marlinと完全に同じG-CODEではありません。3Dプリンタの動作設定に関わる部分は独自のコマンドになっています。
USBシリアル通信自体にも問題があるようです。よく通信が途絶えます。コマンドによっては3Dプリンタがブラックアウトします。スライサの通信ターミナルから動かすことはできないでしょう。
OctoPrintからはかろうじて動かすことができます。ChituなどのなんちゃってMarlinに合わせた修正をするプラグインがあるので入れます。それでも完全には動きません。動かないコマンドを見つけて避ける必要があります。

タッチモニタ

LCDモニタはタッチモニタが使われています。タッチして使えるので判りやすいと思います。
特にヒートベッドの水平調整が簡単です。LCDモニタにベッドの高さの違いが表で表示されます。
ベッドの水平
ベッドの左手前を基準に四隅のネジでベッドの水平調整をします。
そしてノズルとベッドの隙間を決めるZオフセット調整もタッチパネルで簡単にできます。
Ender 3などより簡単に調整できるでしょう。

コントローラーボード

私の買ったもののコントローラーボードはCXY-V6-191017です。ロットによっては異なるコントローラーボードが載っているでしょう。
ESP32が搭載されているようです。32ビットCPUです。
フラッシュメモリー容量などわかりませんが私がMarlin 2.0.9.1をビルドした時のメッセージはこれです。
RAM:   [========= ]  94.5% (used 57184 bytes from 60536 bytes)
Flash: [=======   ]  70.3% (used 337436 bytes from 480288 bytes)
これを焼いて動いています。バッファを盛っているのでRAMの使用率が高いです。デフォルトなら90%以下でした。Marlinを使うためにコントローラーボードを買う必要はありません。
Ender 3では8ビットのコントローラボードが使われているものもあります。その場合、Marlinの最新機能を使うにはコントローラーボードの交換が必要です。最近は32bitのものが出ています。

モータードライバ

モータードライバにはTMC2225が搭載されていました。静音タイプのステッピングモータードライバーです。このおかげで動作音はとても静かでモーターが動く音はほとんど聞こえません。
Ender 3でもTMC2208を載せた静音タイプのモデルがあります。TMC2208とTMC2225の中身は同じでICの外見(パッケージ)が異なります。TMC2225の方がピン数が多いです。

MarlinのLinear Advanceを使う場合はTMC2208/TMC2225の静音モードStealthChopを無効にしなくてはなりません。TMC2208/TMC2225ではUARTというIC用のシリアル通信で無効にします。しかし、TMC2208/TMC2225のUARTが配線されていないコントローラーボードもあるようです。XY-2 PROのTMC2225にはUARTが配線されていません。このようなコントローラーボードではStealthChopを無効にできないのでLinear Advanceは使えません。
TMC2225はICのピンでStealthChopを無効化できます。とても細いピンにはんだ付けをする事になりICを壊す可能性が高いので解説はていません。

余談ですがStealthChopを無効化する理由は、StealthChopが有効だとモータードライバが動かなくなる場合があるからです。原因ははっきりしませんがIC自体のバグだと言われています。コントローラーボード/モータードライバを買うときは注意しましょう。

ホットエンド

互換性のあるMK8タイプのホットエンドが使われています。ノズルなど消耗部品は安い互換品を使えます。
ボーデンチューブがノズルと密着するタイプです。そのため、ボーデンチューブの耐熱温度以下で使う必要があります。ボーデンチューブの連続使用温度は260℃となっていますがこれ以下でも劣化します。ノズル温度は240℃以下、できれば230℃以下で使うことをオススメします。
これで使えるフィラメントが決まってしまいます。PLAを使うのが一番良いです。ABSやPETGを使う場合はノズル温度を気にしてください。

ノズルだけの交換はオススメしません。ノズルとボーデンチューブは一体です。ノズルがボーデンチューブから離れた時点できれいなプリントはできなくなります。ノズルを交換するならホットエンドを全て分解して組み立て直すつもりでやりましょう。

気を付けて使っていても半年もすればホットエンドの分解・清掃・再組立が必要になるでしょう。ボーデンチューブが劣化して内径が細くなりフィラメントが通らなくなるからです。
それまでにホットエンドの仕組みを理解しておきましょう。

ホットエンドの仕組みがわかったらオールメタル化も可能になります。オールメタル化とはボーデンチューブの代わりに金属を使うという意味です。ノズルの温度はボーデンチューブの耐熱温度で制限されていました。金属にすればより高いノズル温度を使うことができます。また、フィラメントを溶かす領域が倍増するので高速プリントが可能になります。

ホットエンドのはノズル温度が安定せずプラスマイナス5℃で振動していました。PIDパラメータを自動調整するコマンドで修正できます。この方法のPIDパラメータでは振動がおさまりませんでした。PIDパラメータを算出する計算式には何種類かあり、異なる計算式で求めたPIDパラメータで安定しました。ホットエンドを分解し組み立て直したら標準のPIDパラメータでも振動しなくなりました。

その他の部品

XY-2 PROに使われている部品を自分で揃えようとしたら10万円近くかかってしまうでしょう。もちろん使う部品の品質にもよります。こだわったら10万円を超えてしまうかも。
それが2万円台で半完成品が手に入るのです。つまり部品の品質はそれなりと思っておきましょう。

動作音は静かだと言いましたが、その分、電源の空冷ファンの音がうるさく感じます。耳障りなんです。長時間聞いていられません。
風の出口に付けるサイレンサーの3Dモデルがあったのでプリントして付けたら耳障りな成分が減り使っていられるようになりました。

半完成品で初心者向けと最初に書きましたが、品質の悪い機械をまともに動かすにはそれなりの知識が必要です。部品交換がすぐに必要になるかもしれません。
ベッドの板金が曲がっているなんてのは最悪です。返品ものです。ネジの山が無い、ネジが曲がっているくらいは普通に想定しておきます。ネジ程度なら自分で交換してしまいましょう。
電源ユニットは壊れる定番です。個別に買うと単価も高いので壊れないで欲しいです。幸い私のは一年持ちました。

私の場合のトラブルを紹介しておきます。
まず、ヒートベッドを移動させるガイドローラーに傷がありました。ヒートベッドを前後に動かすとカタッ  カタッ と周期的に音がしてベッドが振動します。これは造形物に変な模様となって表れるでしょう。ガイドローラーは千円もあれば買えるので自分で交換した方が早いです。
次は電源スイッチが焼けました。突然大きな音がしてXY-2 PROの電源が落ちました。電源スイッチの内部が焼けたようです。電源スイッチの端子の一つがメッキされておらず電流が流れると発熱して限界を迎えたようです。同様な症状を複数の方からコメント頂きました。

新機種

2つのフィラメントに対応したモデルが出ました。エクストルーダーが2つ搭載されています。
2つのフィラメントを同時に使うのはとても難しいのであまりオススメしません。一つのフィラメントでもきれいにプリントするには何度もやり直します。それが2つに・・・
ですが、値段がほとんど変わらないなら良いかと思います。片方だけ使えばいいだけですから。
ホットエンドの構造が異なるので汎用品が使えなくなります。ヒートブロックは汎用品が使えそうなのでそれほど問題ないかも。中身がわからないので詳しく語れません。

XY-2 PROの後継機種も出てきました。
SEはXY-2 PROと同じ造形サイズです。SEでないのは300mm四方と大きくなります。
Y軸とZ軸がXY-2 PROから変わったようです。

ヒートベッドを動かすY軸のガイドレールの幅が広がっています。ヒートベッドがわずかに回転してしまったり奥行きでベッドの傾きが変わってしまったりするのを避けられそうです。
Z軸の送りが左右2箇所になりました。XY-2 PROは左側にしかありません。すると、Z軸を上下する時、左側に遅れて右側が動く、左右で動く高さが違うという事が起きます。両側で動かせば解決します。
ただしZ軸Y軸ともメカ調整が大変そう。Y軸どうなってるんだろう?

ガラスベッドになりました。XY-2 PROのビルドシートは樹脂なのでノズルで溶かして穴を空けてしまいます。ガラスなら安心してプリントできます。清掃も簡単です。

公式にMarlinファームウエアがあります。

XY-2 PROで気になっていた点が改善されています。いいですね。

まとめ

TORONXY XY-2 PRO TITANを買って一年経ちました。
価格は2万円台と安いですがとてもきれいなプリントができます。とはいえ、使われている部品の品質に問題があるのでそれなりのメンテナンスが必要です。
コントローラーボードは32ビットのCPUが載っています。自分でMarlinなどに載せ替える事も可能です。
ホットエンドは必ずメンテナンスが必要になります。3Dプリンタの心臓なので仕組みを理解すると良いでしょう。プリント品質を上げることにもつながります。
今買うならXY-3 SEですかね。

詳細は個別記事で

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