湿気ったフィラメントをヒートベッドで乾燥させる

タイトル

3Dプリンタのフィラメントは湿気を吸ってしまいます。湿気るときれいなプリントができなくなります。乾燥させることで復活するのですが、お手軽な乾燥方法がありません。
3Dプリンタのベッドに置いておけば乾燥できるのでは? と思い、フィラメントを覆うカバーを作ってみました。


フィラメントを乾燥させるには60℃くらいにして風を当てながら5時間ほど置いておく必要があります。微妙な温度なのでお手軽に乾燥させる方法がありません。
フィラメントの乾燥機なるものはアマゾンでも売っています。


たくさんのフィラメントを一度に乾燥させる時にはふとん乾燥機が良いかもしれません。ふとん乾燥機なら自宅にあるという人も多いでしょう。持っていないとなると1万円ほどの出費をしなくてはなりません。
問題はタイマーの時間が少し短くて2時間ほどで切れてしまうものが多いです。

60℃くらいで風を当てて5時間のタイマーがあって・・・と考えているとちょうどよい物が目の前にあることに気づきます。
3Dプリンタのヒートベッドがぴったりそうじゃないですか。私のプリンタはTRONXYのXY-2 PRO TITANです。ベッドのサイズは255mm四方あります。フィラメントの直径は大きいもので20cm程度です。ちょうどベッドに載ります。
温度を保つためにカバーで覆えばフィラメントの乾燥に使えるのではないでしょうか?

FreeCADとOpenSCADでカバーを作る

早速カバーを作ってみます。直径20cmのスプールが入るサイズで作ります。
より利用者が多いEnder 3でも使えるサイズを意識して直径21cmで作ります。
フィラメントスプールが入ればいいのでただの円柱をくり抜けば良いのですが、サイズが大きいため壁を薄くすると変形に弱くなってしまいます。
そこで、外壁部分を少し凸凹させて薄い壁でも強度を上げて作ります。
カバー
凸凹外壁はFreeCADで作るのはほぼ無理です。ここはOpenSCADで作ります。
Customizable Vase Generator by Alteroom is licensed under the Creative Commons - Attribution - Share Alike license.
Customizable Vase Generatorで直径21cmにして作りました。FreeCAD内でOpenSCADを動かせるので便利です。

カバーをしたままだと、フィラメントから抜けた湿気で湿度が上がり乾燥の効率が下がります。程よく外気を取り込む必要があります。そして空気を循環させるため風を送ります。
これにはヒートヘッドが使えそうです。カバーにヒートヘッドが入る穴を空けます。
110mmx65mmの穴を設けました。
とは言ってもそんなに水分があるわけでもないし、自然対流で風は起きるし、穴をあけると熱も逃げるし・・・ヒートヘッドを使わなくてもいいんじゃないかとも思います。

ヒートヘッドがそのまま外気を取り込むと温度が上がらないので、覆いを作りカバー内の温かい空気で循環するようにします。
エアーガイド
XY-2 PROのヘッドサイズに合わせています。ヒートヘッドのサイズによってはそのまま使えないかもしれません。

カバー内の温度を50℃ほどにするにはヒートベッドの温度を60℃以上にしなくてはならないでしょう。60℃を超えるとPLAなどでは溶けだしてしまいます。溶けないまでもフィラメントの太さに影響が出てスムースな送り出しができなくなる可能性があります。
ヒートベッドへ直接フィラメントスプールを置くのはやめましょう。そこでトレイを作ります。
トレイ

以上のモデルはThingiverseに置いてあります。

カバーをプリントする

カバーをプリントします。80℃ほどのベッドに触れるので材質はABSかPETGを使いましょう。PLAでは溶けちゃいます。
一番難しいのはカバーのプリントでしょう。そこそこの大きさがあるので反りがでるでしょう。外壁は薄くしてあるので積層割れが起きやすいでしょう。

XY-2 PRO標準のビルドシートを使ってABSでプリントすると反りでビルドシートが剥がれました。下の部分が反ると上に重なるものにも影響し変形して積層されていきます。真っ直ぐな壁面にプリントできませんでした。
ベッドを鏡にして鏡への定着を良くすれば反りを抑えてプリントできました。積層割れはどうしても起きます。酷くなければ気にせず使えるでしょう。
PETGの方が良いかもしれませんね。

乾燥用G-CODE

乾燥作業のためのG-CODEを作ります。
2つのファイルを作りました。一つはフィラメントを載せやすい位置へヒートベッドを移動するファイル、もうひとつは温度設定と5時間タイマーとなるファイルです。
1つ目はこんなG-CODEです。
;Dry set up
G28 ; Home
G1 Z200 F500
G0 X110 Y200
2つ目はこんなG-CODEです。
M104 S65 ;Hotend Temperature
M140 S65 ;Bed Temperature
G0 X120 Y100 
G1 Z90 F500
;M106 P0 S127 ; Fan ON
G4 S15 ; 15sec pause
G4 S15
;・・・ 略 5時間分のG4命令
G4 S15
G4 S15
M106 P0 S0
M104 S0
M140 S0
G1 Z200 F500
ヒートベッドとヘッドの温度を設定しヘッドを下ろしていきます。
15秒のポーズ命令G4を5時間分書いてあります。これで進捗のパーセンテージ表示が動きます。

温度の確認

最初はカバー内の温度を見ながらベッド温度とヘッド温度を調整してください。カバー内が50℃になる程度を目指します。室温の影響を大きく受けます。きっちり合わせる必要はないでしょう。
スプールが入っているとベッドに近い下側と遠い上側で温度が大きく異なるでしょう。ベッドの近い側が60℃を超えないように注意しましょう。

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