オールメタルホットエンド徹底解説 バイメタルヒートブレイクで高速プリント【Tronxy XY-2 PRO】

タイトル
MK8タイプのホットエンドの欠点を無くすオールメタルホットエンド。その仕組を解説します。
バイメタルヒートブレイクをTronxy XY-2 PROに組み込んで高速プリントをします。

前回、MK8 ホットエンドの仕組みについて解説しました。

この記事を読み進める前に上のリンク記事を是非読んでください。
MK8タイプのホットエンドの考え方を理解すると、260℃以上が必要なフィラメントが使えない理由、高速なプリントができない理由がわかります。
ここを腑に落としていないとオールメタルホットエンドとは何者かが理解できないでしょう。

オールメタルホットエンド

MK8タイプのホットエンドの正体はこれです。
MK8ホットエンド
ヒートブロックやヒートシンクは飾りです。
ノズルとPTFEチューブが接しているのでノズルの温度をPTFEチューブの耐熱温度より高くできません。PTFEチューブの耐熱温度(連続使用温度)は260℃ほどです。実際は230くらいを上限に考えておきます。
また、PTFEチューブは断熱材としても使っています。PTFEチューブの中のフィラメントは溶けません。硬いままです。ノズルに入った瞬間にフィラメントが溶けます。これが理想。
実際はノズルに近いフィラメントの温度は高くなり柔らかくなってしまいます。この状態のフィラメントはエクストルーダの押し引きの動きを吸収してしまい正しいフィラメントの押出ができなくなります。

ノズルを直接加熱できないので、高速なプリントで大量のフィラメントがノズルに流れ込むとノズル温度は下がってしまい、フィラメントを十分に溶かすことができず吐出量が足りなくなります。

この欠点を回避するのがオールメタルホットエンドです。
考え方は単純。ノズルにPTFEチューブが接しているのが悪い!
ノズルとチューブを離す
離れた部分はヒートブレイクで代わりを務めます。
ヒートブレイクがPTFEチューブの代わり
PTFEチューブの断熱が無くなって大丈夫なのか?
ヒートブレイクのスロート(細い所)の直径はフィラメントが通る径へと細くします。その分断面積が減ってノズルからヒートブレイクの上へ熱は伝わりにくくなります。また、ステンレスなど熱伝導率が低い材料で作りフィラメントが溶けないようにしています。

PTFEチューブではノズル側で溶けないようにしていましたが、今度はフィラメントを溶かすようにします。これでフィラメントを溶かす範囲が拡がります。ヒートブロックから熱を受ける部分も倍増です。
これにより、高速プリントでもフィラメントを溶かすに十分な熱を受け取れます。

ヒートブレイクが代わりになるならそもそもPTFEチューブを使う理由を疑問に思うかもしれません。
犠牲になるのは扱いやすさです。PTFEチューブの中で柔らかくなったフィラメントが押されて太ってPTFEチューブの内壁に密着しても固着したり詰まったりすることはほとんど無いでしょう。太くなっても滑って押されていきます。しかし、冷えたステンレスのチューブの内壁に溶けそうなフィラメントが押し付けられたらどうなるでしょう?簡単に詰まってしまうでしょう。リトラクションの設定を間違えるとすぐに詰まります。
初心者でもプリントしやすいのがPTFEチューブを使っている理由でしょう。

オールメタルホットエンドのヒートブレイクはヒートシンク側は熱を逃しやすく、スロートは熱を伝えにくく、ノズル側は熱を受けやすく作る必要があります。
熱の伝わり
なんか矛盾する機能を求めていませんか?
そこで考えられたのがバイメタルヒートブレイクです。

バイメタルヒートブレイク

バイメタルヒートブレイクは熱を伝えるところは銅で、熱を伝えないところはステンレスでできています。
Bi-Metal Heat Break
これでオールメタルホットエンドの理想に近づきました。

早速買って組み付けてみます。
でもバイメタルヒートブレイクって価格の幅が広いです。千円くらいから1万円を超えるものまで。何が違うのか?違わないのか?
フィラメントの通り道のステンレスの内壁がきれいにできているのが理想です。真面目に作ると高そうです。でもアマゾンでそんな品質わかりません。私は一番安いのを試してみました。

ホットエンドの種類によってヒートブレイクにはいくつかの形があります。持っているホットエンドに合った形状の物を選ばなくてはなりません。ネジが切ってあるスレッドタイプとか、切ってないスムースタイプとか、MK10用、V6用とかあるので間違えないよう選びましょう。

バイメタルヒートブレイクへ換装

バイメタルヒートブレイクへ換装します。
私の3DプリンタはTronxyのXY-2 PROです。買ったヒートブレイクの長さが短くなってしまいました。また、ヒートシンクへしっかり差し込むとホットエンドの長さが短くなってしまいます。放熱が悪くなりそうですがヒートシンクへ浅めに挿して固定します。
バイメタルヒートブレイクへ換装

XY-2 PROにはレベルセンサーが付いています。レベルセンサよりノズルは下へ出っ張っていないとホットベッドにノズルが付きません。ヒートシンクへ差し込む深さを調整して良い長さを見つけます。
レベルセンサーとノズルの高さ

バイメタルヒートブレイクのスロート(細くなっている部分)が細く弱くなっています。ノズルを締め増しする時に曲げたり折ったりしないよう注意します。

ヒータ温度のPIDパラメータの再調整をしておきましょう。

テストプリント

スライサのリトラクション距離を今までの半分にしてください。それで3mm以上になるなら2mmにしてください。フィラメントが詰まってしまうかもしれません。糸引きや垂れを気にするのは後回しです。

高速プリントが可能になったか確かめるため、速度を60mm/sから140mm/sへ上げてテストしてみまし。問題なくプリントできました。以前より造形品質は良いくらいです。
実際の様子はビデオを御覧ください。

ビデオ











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